<10日目ー1>
2017年 3月2日 木曜日 ブロモ山 晴れ 寒い。
昨晩は車で、ジャワ島北東部のマドゥーラ海峡に臨むプロボリンゴの町からブロモ山を目指して登り、山麓のガディサリ村のゲストハウス「ヨシ(Yoschi)」に泊まった。
<ブロモ山のビューポイントを目指して>
朝2:00に起きる。ブロモ山は標高2,392mあるが、このホテルもその麓なので朝方寒くて眠れない。
しばらくすると、外ではホテルの従業員が、モーニングコールなのか各部屋をノックして客を起こして回っている。
私は薄手のフリースの上にダウンジャケット、ズボンの下には登山用のタイツ、毛糸の帽子にネックウォーマーを付けている。山の上では、標高が100m上がると気温が0.6℃下がるので、山の上では下より14℃ほど低いと見越して用意していた。
中庭には各部屋から出て来た宿泊客が集まっていて、呼びに来たガイドに連れられて順次外に出て行っている。
私もまだガイドが来ないので待って居ると、欧米人の若い女性が一人部屋の前で待って居た。まだガイドが来ないのか、連れが部屋でまだ準備している最中だったのだろう。「Good Morning!」と声を掛けると、同じように「Good Morning!」と笑顔で答えてくれる。「It’s cold!」と言うと「Yes!」と。
若い男性のガイドが来て一緒にホテルの外に出ると、荷物の入った箱を首から下げた駅弁売りのスタイルで、現地の若者が毛糸の帽子や手袋、マフラーなどの防寒着を売って居た。
朝3:00に出発。
此処からランドクルーザーに乗って、ブロモ山のあるテングル・カルデラ(Tengger Caldera)の外輪山にある標高2,770mのビューポイント(プナンジャカン山Gunung Penanjakan)に行き、サンライズを見る予定だ。
昨晩泊まったホテルYosvhiは欧米人のバックパッカーやマレーシアのグループなど、皆んなブロモ山ツアーの人達で一杯だった。
それぞれが別のツアー催行会社のトヨタ・ランドクルーザーで出発して行く。このランドクルーザーが揃いも揃って、何故か旧式の40系なのだ。
私は体力を考えて、ひとりで参加出来るツアーにしたので、まだ若いテングル人のドライバーの助手席にひとりで座る。
ホテルを出発したランドクルーザーは、真っ暗な山道を列をなして登って行く。
急傾斜な上、日光の「いろは坂」みたいに七曲りで、しかも穴ぼこだらけの凸凹道だ。
更に最悪なのは旧式のランドクルーザーなので、ディーゼルエンジンを目一杯吹かす為、前の車の排気ガスがマトモに車内に入って来て、時々息を止めないと苦しくなるほどだ。この道を数珠つなぎにのろのろと登って行く。
先を行くランドクルーザーが停まって、次々に道の傍に駐車する。此処からは歩きらしい。
6:30迄に車に戻って来いとドライバーが言う。そしてこのナンバーのこの車だと指さしながらくどくど言う。私はiPhoneで、車のナンバープレートを写真に撮っておく。
他の車から降りた人も、同じ道を歩き始めている。
私もビューポイントに向かう暗い路を歩き出したが、急に眩暈(めまい)と吐き気に襲われて、立ち止まってしまった。
初めは散々吸って来た排気ガスのせいかなぁと思ったが、見ると路を歩く人が同じように何人も立ち止っている。
ブロモ山自体は2,392mだが、ビューポイントはこれを見下ろす位置にあるので高山病の可能性もあるかなと、持って行ったペットボトルの水をガブ飲みする。少し落ち着いて来たのでゆっくりと登る。
ブロモ山は信仰の山なので、ビューポイントの手前には寺院の様な門があり、これを潜って入ると、柵で囲われた広場に出る。私たちの出発も早かったが、既に多くの人の黒い影でいっぱいになっている。そしてその間を縫って、防寒着や手袋マフラーなど様々な物売りの人が歩き回って居る。
空を見上げると、昨日の夜の激しい雨にも関わらす、天の河こそ見えないものの名前も知らない無数の星がきらめいている。
未だ4時だ。
日の出には未だ大分時間があるので、他の人と同じように石段に座ろうかと思ったが、見ると未だ濡れたままだ。
その時物売りが来て、Rp.20,000(約170円)と言って来る。
何を売っているのか分からないが、反射的に「No thank you,」と言おうとしたが、見ると手には何枚ものマットを持って居る。ふと横に座っている人を見ると、端にレンタル屋と思しき名前が書かれたマットに座っている。
そういうことか。雨上がりの日を狙ったキワモノ商売の典型だなぁと感心して、お金を払うとそれを敷いて座った。
<ついにブロモ山の絶景を観る!!>
5時近くなると東の空が赤く染まって、たなびく様な雲が黒いシルエットになって美しい。しかも空高く上った積乱雲には、時折稲妻が下から上に向かって光っている。初めて見る光景だ。
次第に明るくなってくると、やや南寄りの眼下に外輪山に囲まれた広大なテングル・カルデラ(Tengger Caldera)と、その中に白い噴煙を吹き上げる中央火口丘のブロモ山(Gunung Bromo 2,392m)の姿が現れて来た。隣の円錐形の緑色の山は、バトゥッ山(Gunung Batok 2,440m)だ。
全体が、外輪山の後ろの白い雲海に浮かぶ、富士山の様な形のジャワ島最高峰のスメル山(Bnung Semeru 3,676m)を背景にした箱庭の様で、息を飲む様な素晴らしい光景だ。こんな凄い景色があったんだ!!
展望台の柵には人が鈴なりで、みな画面に柵が入らない構図を狙って一眼レフやスマホで画像を撮って居る。アジア人は声を掛けると場所を譲ってくれるが、この寒いのに薄着の欧米人の若者たちは、柵に掴まったきり動こうとしない。民族性かな。
5時半を過ぎる頃、東の空に朝日が上がって来た。雲が掛かったままで、周囲の朝焼けは美しいが、太陽そのものは良く見えない。
今日はサンライズは難しいのかもしれない。
それを見届けると、みな三々五々ランドクルーザーに戻って行く。
5:40、私は大分我慢して居たので公衆トイレRp.3,000(約25円)に行く。
身体が冷え切っていたので、戻る途中にあるワルン(Warung小さな屋台の様な店)に入る。
店内は真っ暗で、客もローカルの人以外おらず、観光客然としているのは私だけだ。
奥にいる中年の女性に、「ミンタ テェ― パナス Minta teh panas. 暖かい紅茶を下さい。」と言って注文すると、周囲の人が物珍しそうにこちらをじろじろ見る。出て来た紅茶もカップが黒ずんでいたが、温かく美味しかった。
「ブラバ ハルガニア? Berapa harganya? いくらですか?」と聞くと「ドゥア リブ Dua ribu。 Rp.2,000(約17円)」と。
飲んでから、ランドクルーザーに戻った。