歳をとっても旅が好き

海外ひとり旅の記録?いや記憶かな

南インドひとり旅(1999年) <13> まだ5日目 バスに乗ってトリヴァンドラムへ向かう

<5日目ー2
1999年 2月24日 水曜日 カニャークマリ、トリヴァンドラム 晴れ
インド亜大陸の最南端、聖地カニャークマリからまた移動しようとしている。

<バスで、カニャークマリを出発>
聖地カニャークマリから最後の地トリヴァンドラムまでは、初めて昼間の移動だ。
BUS STANDの待合所に並んだベンチで、他のインドの人たちと一緒にBUSを待っている。
眼の前の広場には、熱い陽が照り、熱帯の紅い花が風に揺れている。日陰になったプラットフォームの隅では、親子の黒い山羊がうずくまっている。
私はなんとなく、ELTの「Time goes by」を口ずさんでいた。「♪もう一度思い出して、あんなにも愛したこと」。

カニャークマリのBUS STAND

日陰には野良ヤギがのんびり寝ている

15:00発予定のBUSが遅れて、15:30にBUS STANDに到着した。
BUSは中型、マドライから来た時の巡礼バスよりは幾分か近代的だ。
通路を挟んで左右のシートはベンチ式で、幅は日本の2人掛けと同じ位のサイズだが、3人掛け用だ。始発時はザックを抱えて一人で座っていたが、途中からは男性客が乗って来て、まさかと思ったが男性3人で座わることになった。さすがにキツイ。

バスの座席、これで3人掛けはキツイ

バスの切符 Rs.23だった

インド亜大陸の最南端のカニャークマリから、アラビア海沿いのケララ州トリヴァンドラムまでの距離は、凡そ87Km位だが、このBUSで3時間30分くらい掛かるらしい。
BUS運賃は、Rs.23(約80円)をBUSの中で、車掌に支払った。
近代的と思ったバスも、やはり客席の窓にはガラスは無く、一昨晩の巡礼バスと同じようにひどい揺れだ。
しかし昼間の移動は、通っていく町や村の様子が見えて、とても楽しい。

面白いのは、タミル・ナードゥ(TAMIL NADU)州を走っている間は道路を傍若無人に我が物顔で走っていたBUSが、隣のケララ(KERALA)州に入った途端、スピードが遅くなり、対向車とすれ違う時の車間距離も広く取っている事だ。
タミル・ナードゥ州内では、前走車への追い越しの時も、クラクションを鳴らして行けば大概の前走車は道を譲って呉れたものが、ケララ州では譲らないどころか、追い越しを掛けたBUSが追い越しきれず、対向車線にはみ出したまま前走車と並走しながら、運転手同士で怒鳴り合っている。

何となく車内を見渡していると、反対側の席にいたインド人の年配の婦人が、窓の外に何度も顔を出している。
対向車とはお互いギリギリの間隔ですれ違うインドの交通事情を考えると、何で皆が注意しないのかと不思議に思っていると、同じ窓側で婦人の後ろの席の人達が、雨の時降ろす木のブラインドを一斉に閉めた。
この時初めて、彼女が車酔いで窓から吐いているのが判った。
やはりインドの人にとっても、大変な移動なのかと改めて思った。

車窓には、次第にココヤシの木が目立つ様になってきた。いかにも南国らしい雰囲気だ。
ケララ州は、西ガート山脈(Western Ghats)を挟んでタミル・ナードゥ州と背中合わせだが、アラビア海から吹く風を真ん中の山脈が遮るので、ケララ州では雨が多いらしい。そのせいで、ベンガル湾沿いのタミル・ナードゥ州より、ケララ州に入ったら椰子の木が多くなったのかもしれない。

しかしケララ(KERALA)州は、こののんびりした風景とは裏腹に、インドで最も人口密度が高く、貧しい地域らしい。中東地域への出稼ぎ者の多いことでも知られている。
そのためか教育熱心で識字率も高い。早くから香料の輸出地としてヨーロッパ人の来訪も多く、キリスト教徒は人口の5分の1を占めているとガイドブックには書いてあった。

道路の端に立て看板が並んでいて、そこには「ケララは神に選ばれた場所」というような意味の標語が書かれていた。

カニャークマリからトリヴァンドラムへ移動

<トリヴァンドラムに到着>
鉄道線路の跨線橋を超えると、トリヴァンドラム中央駅(Trivandrum Central R.S.)の鉄道駅舎が見えてくる。18:30、その斜め向いのKSRTC BUS STANDに到着。
3時間弱で着いた。
広い敷地に何十台ものBUSが駐車し、沢山の人が出入りしている。この混雑を見ていると、南インドは鉄道よりBUSが主要な交通機関の地域なんだという気がする。

バスを降り、サブザックを背負って、夕方の雑踏の中をガイドブックでチェックしていたHOTEL REGENCYに向かう。
此処は小ぎれいで、価格もリーズナブルだと書いてあった。

駅前から少し裏になり、静かになってくる。薄暮の中、歩く人の服装や容姿を除くなら、東京郊外の裏道を歩いているようだ。
目指すホテルを見つけ、Receptionで「Can I get a room, tonight ? 」と聞くと、カウンターに凭れていた中年のManagerらしい人が、にっこり笑って「Full」だといい、「Sorry」と申し訳なさそうに言う。

仕方なく来た道を戻りながら、荷物を抱えて夜道を探しまわっても詮方ないと考え、当初考えていた料金より大分高そうだが、カニャークマリからのバスを降りたKSRTC BUS STANDのすぐ横の、ホテル・チャトラム(HOTEL CHAITHRAM)をあたってみることにする。ここは駅前のKTDC(Kerala Tourism Development Corporation ケララ州観光開発公団)が経営するホテルだ。

Receptionに着いて「Can I get a room, tonight ? 」と聞くと、どんな部屋が希望なのか?と聞かれたので、この旅行で最後のHotelかも知れないので、豪華にAttached A/CのTwinにした。なんと1泊Rs.805(約2,818円)だ。
此処に2泊することにした。
HOTEL CHAITHRAM  Rs.805×2泊=Rs.1610。部屋は「604号」。

荷物を置くと、シャワーも浴びず、とりあえずと食事に出る。
疲れていたので、先にシャワーをしたら食事もせずにベッドで眠り込んで仕舞いそうだった。

町中で食堂を探す気も起きないので、HotelのRestaurantに行く。時間帯なのか、お客が殆どいない。
マッシュ・マサラ、フライドライス、コーヒーを頼む。
正直、今までで一番まずい。
最後にウェイターに「Bill、Please」と言ったら、怪訝そうな顔をして「Beer?」と聞いてきた。
「Check」だと言うと、若いウェイターは薄ら笑いを浮かべて、「Bill」の発音はこうするんだとばかり、わざとらしく「Bill」の発音を何度も繰り返す。
この野郎と思ったが、黙って金を払って出てきた。チップも置かなかった。
このせいではなく、本当にまずかった。二度と行かない。
Rs.160(約560円)。

部屋に戻り、タオルで顔を拭いたら、白いタオルが埃で真っ黒になった。