歳をとっても旅が好き

海外ひとり旅の記録?いや記憶かな

南インドひとり旅(1999年) <12> 5日目 巡礼者と一緒にガートで朝日を拝む

<5日目ー1
1999年 2月24日 水曜日 カニャークマリ 晴れ

<夜明けのカニャークマリ(KANYAKUMARI)>
朝4:00、持参した小型の目覚まし時計のアラーム音で目覚める。
5:30、起きだして日の出を見に行く。

周囲はまだ暗いが、昨日行った海岸のガートの周囲は、すでに立錐の余地も無いほど沢山の巡礼者で一杯だ。私も僅かに空いた岩の一角に座って、東の空を眺めている。

7:00頃、次第に空が明るんで来て、ベンガル湾の水平線がオレンジ色に染まってくる。沖合の昨日行ったヴィヴュカーナンダ岩と、その前の、周囲に建設中の足場が組まれたタミル語の有名な詩人ティルヴァルヴァル(Thiruvallvar)の巨大な像が、一層黒々としたシルエットで浮かんでいる。
今日も薄曇りで、期待したようなくっきりとした朝日は見られないまま、空は白々と明るくなってきた。
でも多くの巡礼者の熱気と貴重な体験を、一緒に共有しているような満ち足りた気分になる。

暗いうちからガートに集まって来た巡礼者

ベンガル湾から上る朝日

私が逆光の中、ぼおっと明るんで来た東の空と沖合の島の写真を撮っていると、近くにいた巡礼者の母親が、カメラの前に10歳位(?)のシャルワール・カミーズを着たおさげの女の子を立たせて、この子を撮ってやってくれと言う。
多分タミール語で言葉は分からなかったが、言わんとすることは分かった。
でも朝日に向かって写真を撮ったら、逆光で少女が真っ黒なシルエットにしか映らない。反対に順光で撮ってやろうかとも思うが、それでは朝日が写らない。朝日を拝みに来たガートでの撮影の意味がないだろう。でも、多分母親はタミール語しか解さないだろうし、私の拙い英語でも、どのように話せば良いか分からない。
逡巡していると、母親が急かす。
仕方ないので、太陽に向かってシャッターを切る。わが子が真っ黒なシルエットでしか映っていない写真を見たらがっかりするだろうなぁと思いながら、写真の送り先を聞こうとすると、すっかり上り切った太陽の下で、巡礼者が一斉に立ち上がって帰って行く。あの母子もいつの間にか他の巡礼者に紛れて見えなくなってしまった。

写真を撮ってくれと頼まれて撮った巡礼者の少女

朝日が昇った後のガート附近

 

<絵を描く人>
ガートから戻って、HOTELのDinningで朝食。コーヒー、オムレツ、そしてトースト。
コーヒーRs5、オムレツRs10、トーストRs12、TOTALでRs27(約95円)。

ホテルのダイニングで朝食

昼近くになって、両替しようとメインロード(Main Rd.)にあるCANARA BANK に行く。
昨日も立ち寄ったが、狭い行内に人がいっぱいで出来なかった。手持ちの乏しくなったルピーを考えて、今日はどうしてもしなくてはと、人混みを掻き分けて窓口に並んだ。
「Do you accept traveler’s checks?」と聞くと、OKだったので、「Please exchange.」と言って、トラヴェラーズチェックの$100と$50の2枚に署名して切って渡す。

Rs.6,000だった。レートは、$1=Rs.40。
手元にドルの現金がなかったので、ここで沢山ルピーに両替し、出国の際ドルの現金に再両替しようと思った。

しかし、周りから覗き込むような現地の人の視線に晒されながら、窓口で沢山のルピー札を数えるのにかまけて、肝心のBANK RECEPTを貰うのを忘れて仕舞った。これが無ければ、ドルへの再両替は出来ない。

別の列で並んで両替をしていた、日本人の30~40歳位の男性と知り合う。
インドで良く出会う、少し汚れたティーシャツ、サンダル履きの若者とはちょっと異質な、清潔そうな白い服を着た、痩せぎすで小柄な体躯で、鼻の下に薄い髭を蓄えていた。無精髭かもしれない。

どちらともなく言い出して、一緒にHOTEL(食堂)でミールスを食べながら話す。
ミールスは、エッグマサラ、チャパティ。Rs.32(約112円)。
彼はもう3ヶ月程インドを歩いていると。スケッチブックを持っていたので見せて貰うと、インドの人々の生活の様子や、風景が描かれていた。非常に上手な絵だった。

私がトリヴァンドラムに行くためBUSの時刻表を確認したいと言うと、一緒にKovalam Rd.を歩いてBUS STANDまで行った。
事務所に掲げられたトリヴァンドラム行きのTime Tableを確認する。
15:00PM出発に決めた。
窓口で聞くと、運賃はバスの中で払うらしい。

彼は近くのゲストハウスに泊まっていると言っていたが、私はいま泊っているHotel Maadhiniは窓からの景色が綺麗で、しかも1泊Rs.250の部屋だと言うと、何となく彼も付いて来た。
私が部屋で荷をまとめReceptionに降りて行くと、覗きこんでいる2~3人の従業員の中で、彼はまた海を描いていた。

チェックアウトし、彼に「では、行きます。」と声をかけて玄関を出た。少し会釈して、またすぐ海に目を注ぐ彼に、人恋しさがあったかも知れない。短い出会いと別れだが、インドの旅は何故かいつもこうだ。

ホテルから乗って来たオートリキシャから降り、BUS STANDまでのKovalam Rd.の坂を上りながら、ふと後ろを振り返ると、民家やクマリ・アンマン寺院(Kumari Amman Temple)の尖塔に挟まれて、あの美しいエメラルドグリーンの海が見えた。降り注ぐ日差しの中で、何か不意に目頭が熱くなった。
オートリキシャHotelからBus Standまで、Rs.15(約53円)。