歳をとっても旅が好き

海外ひとり旅の記録?いや記憶かな

インドネシア・ジャワ島ひとり旅(2017年) <26> まだ10日目 いよいよブロモ山に登るのだが・・・!!

<10日目ー2> 

2017年 3月2日 木曜日 ブロモ山 晴れ 寒い。

ブロモ山の外輪山のビューポイントに登り、サンライズと朝日に浮かび上がるテングルカルデラの、文字通りの絶景を目の当たりにした。

 

<いよいよブロモ山に登るのだが・・・>

ブロモ山の外輪山にあるビューポイント(プナンジャカン山Gunung Penanjakan)から箱庭の様なカルデラの光景を観たあと、ランドクルーザーに戻った。
乗り込むと、今度はまた列をなしてランドクルーザーは外輪山を降り、先ほど見たカルデラの内部に入って行く。

ランドクルーザーで外輪山を降り、カルデラ内に入って行く。

車が止まると、さあ登って来いと云う様に車から降ろされてしまった。
テングル・カルデラ(Tengger Caldera)の中は火山灰の砂漠の様で、草木一本生えて居ない。火山灰は水を含むと硬くなるが、昨晩の大雨による侵食なのか、いく筋もの深い溝が縦横に走っている。
中央火口丘であるブロモ山へは、この砂漠を横断して山に登るのだが、何よりあれだけ噴煙や地鳴りの様な音を上げて活動している山に登っても大丈夫なのか?と素朴な疑問が湧く。しかし周囲にはそんな事を一顧だにする人は誰も居ない様だ。

 

<馬に乗って山を登る!!>
砂漠も歩けば足が砂に潜り込むので、歩くには大変そう。しかも此処からなら標高差は余り無いものの、それでも体力的にキツそうなので、地元のテングル人がやっている馬に乗って登ることにする。

近くに居た馬子と交渉。Soloのサンギランへ行ったとき、タクシーの運転手との交渉で覚えた「PPペーペー」(往復)を早速使って、値段の交渉。引馬で、RP150,000(約1,270円)。
私が馬に乗った経験は、昔小さかった子供達を連れて富士山の五合目で跨った位で、しかもあの時は馬子が手綱を引いてくれたし、割合大きな馬でおとなしかった。何より私も若かった。

でも、今回も馬子が手綱を引いてくれるので、割合安直な気持ちで申込んだのだ。
しかし此処の馬は小さく、体も細い。鐙に左足を載せて左側からエイっと跨ぐ。すると一瞬馬も動くので、跨ったままつんのめって仕舞った。

乗ってみると馬の細い背中で身体が左右に揺れ、捕まるところは鞍の前橋部に付いたホーンの様なグリップしかなく、落ちそうになる。
馬子が私を見上げて、「Have you ever been on a horse? 馬に乗ったことある?」と聞いてくる。乗り方があんまり酷いと思ったのだろう。私が「First time」と言うと、流石に馬子は心配そうな顔をしたが、それでも手綱を引いて歩き出した。その後ろを、馬の歩みに従って左右に揺られて落ちそうな私が続いて行く。

頼りなげな細身の馬に、頼りなげな乗り手が乗って・・・

しかし私も耳経験だけは豊富な年寄なので、まずは太腿の内側で馬を挟み、姿勢を良くすると馬の負担が少なくなって馬が大人しくなる、と何処かで聞き齧ったことがある。そうすると、馬の左右の動きが少なくなった気がする。歩く馬の動きは上下だけでなく前後左右なので、バイクの後ろに乗せて貰った時の様に、振動にリズムを合わせて体重移動すれば良いんだと思うと、平坦な砂漠を歩くうちに早くも乗馬のコツを掴んだような気がしてきた。

しかし馬は砂漠を超え、これから山に登って行くのだ。しかも道は平坦では無く、山から流れ落ちる水が土を削って、幾筋もの深い溝が掘られている。
登りなので馬は前上がり、私はそのままでは仰け反って振り落とされて仕舞うので、必然的に前傾姿勢になるが、馬は溝を避けて左右に動き、私も必要以上に手に力が入るので、馬が首を振ってイヤイヤをし、身体も大きく動く様になる。

周囲には徒歩で登っている沢山の人と、私と同じように馬で登って行く老人や女性も居る。この中で落馬もみっともないし、何より下は火山灰とは言え雨で固まって痛そう。頭から落ちたら酷い怪我をしそうだ。そこで落ちまいと内腿をさらに強く締め付ける。すると手の力が少し抜け、何とか馬の登れる終点まで辿り着くことが出来た。

遥か下のふもとの馬囲いから、馬に乗って登って来た。

馬は此処で終点。見上げるとまだ長い階段が。

<活火山ブロモ山は恐ろしかった!!>
此処からはあと250段位の階段が続いている。周囲は火山の灰や溶岩の礫で、一木一草も無い。
当初の目論見では、馬で登って体力を温存し、この階段に備える!というものだったが、乗馬そのものではや疲労困憊で、階段は休み休み登る羽目になってしまった。

山頂まで長い階段を登って行く。


ようやく到着した2,392mの頂上は、火口の縁だ。
登って来た階段の付近に一部柵があるが、他は無く、火口の縁は幅1mも無い不整地なので、ちょっと滑ったらそのまま火口か、あるいは反対に山の斜面を麓まで転がり落ちそうだ。
しかも何より怖いのは、火口から容赦なく大量の白煙が吹き出しているだけでなく、ゴーゴーと物凄い地鳴りのような音が響いているのだ。阿蘇山の火口も迫力有るが、こちらは直ぐにでも大爆発が起きそうな雰囲気で、怖いったらありゃしない。
折角苦労して登ったにも関わらす、僅かな時間とどまっただけで下山することにした。

頂上は細い火口の縁

火口から、噴煙とゴーッという地鳴りのような轟音が響く。

しかし階段を降りきれば、また馬だ。今度は下山で、こちらの方が大変そう。その大変さを思うと気後れがして、ちょっと息を整え、力の入らない脚を回復させてからと、途中で写真を撮ったり、景色を見る風で佇んで見たりしながら降りる。
しかし上りに馬に乗っても、下りに使う人は多くはない。PP(往復)で依頼したけど、最悪下りのお金だけ払って徒歩で降りようかとの思いも脳裏を過ぎったが、折角の機会で下りも体験しないのは惜しいと思って、また馬上の人となった(笑)。

下りは、今度は身体を反らせる。ちょっとでも前になると、もろにつんのめって仕舞う。私の手に力が入っているのか、腿を必要以上に締め付けて居るのか、馬がいやいやして大人しく降りてくれない。
馬子が再三馬を促して大人しくさせるが、今度は登ってくる馬とすれ違う際に急にルートを変更すると、馬の姿勢が変わって、上に乗っている私の姿勢はもっと大きく左右に振られるので、更に手に力が入り、腿を必要以上に締め付けることになる悪循環だ。
歩いている周囲の人たちは馬が近づくと、必ずと言って良いほど馬と乗り手の表情を見る。私はなるべく必死さを顔に出さない様に、どこ吹く風の表情で居た。
漸く平坦な砂漠に着いた時は、正直ホッとした。