<5日目>
2017年 5月26日 金曜日 モウラミャイン 晴れ 夕方から暑い。
<朝、下痢と嘔吐が始まる>
早朝の未だ暗いうちから下痢と吐き気が始まった。
下痢は、固形物は最初だけであとは水のようなものばかり。10分措きにトイレに行く。出て手を洗う傍から、また行きたくなる。
吐き気も酷い。腹が張っていて、気持ちが悪くて堪らない。
今朝は6:30出発のキンプン(Kinpun)行きバスのチケットを取ってあり、5:30には昨日頼んでおいた、バスターミナルまで送ってくれるタクシーが待っているはずだ。
強行しようかとの逡巡や葛藤もしたが、身体が動かない。
タクシーが着いたと呼びに来てくれたボーイに、「I am sick. I can not move. Please cancel the taxi. And give this fare to the taxi driver. 病気で動けない、タクシーをキャンセルして欲しい」と言って、料金3,000Ks(約240円)を渡してくれる様頼む。あと「I would like to stay more two days.」と依頼。
そのうちトイレに行く以外、起き上がることが出来なくなった。
病院に行きたいが、外国人を見てくれる医師がいるのか。一昨日歩いた限り、モウラミャインはバンコクの様な近代的な都会では無い。大きな総合病院など見かけなかった。
どうしたら良いだろう?考えが纏まらない。
とにかくレセプションに電話して、病院に行く手はずを付けなくちゃ。でもレセプションの番号って何番なんだ?気持ち悪くて電話まで辿り着けそうもない。電話口でなんて言うんだ?「I am sick. I want to go to hospital」?考え続けるだけで吐きそうだ。病状を何て言うんだ。「diarrhea」(下痢)、「吐く」は何て言うんだっけ。とても病院に歩いてなんか行けない。もうベッドから起き上がるのさえ出来ない!
考えあぐねた末、ベッドに横になりながら、娘にiPhoneからFacebookのメッセンジャーで伝言を送ってみる。キーを何度も押し間違える。
「お願い。いまモウラミャインで具合が悪く、ホテルで寝てます。吐き気とひどい下痢。病院に行きたいので、モウラミャインに外国人を診てくれる病院があるか調べてくれない?出来たら早く。すいません。」
そうしたら突然、私のiPhoneが鳴った。何?今ごろ誰から?ホテルのレセプションか??でも、それなら部屋の電話に掛けてくるだろう。このiPhoneの電話番号を知ってる人なんかいるのか?
疑心暗鬼のままiPhoneに出ると、娘からの電話で、「大丈夫⁇」と。ええっ??!!
嬉しかった。地獄に仏とはまさにこのこと。通話機能付きのSIMカード買っていて良かった!!
早速、病院に行きたいと話す。
今度はメッセンジャーにすぐに返事があって、ホテルのレセプションに電話をして、病院に行きたいのでタクシーの手配をしてもらったと。私の英語が拙いのと、うろたえていて部屋の電話の何処を押したらレセプションに繋がるかも分からなかった。今度はその部屋の電話が鳴って、タクシーが来たと。
着替えようと起き上がったら、今度は急に凄い吐き気に襲われて、慌ててトイレに駆け込んだ。
洋式の便器を抱え込むように屈む。初めは殆ど出なかったが、そのうち発作的に嘔吐が始まり、繰返し5回くらい大量の吐瀉物を吐いた。
洗面台で口を濯ぎながら、吐き気が収まって少し楽になった。
<街中のローカルな病院に行く>
タクシーに乗って、レセプションの人曰く、「町に1つしかない病院」に行く。
診療所のような病院は、旧い商店の多い一画にあった。それらしい看板もない。町家の様な低層の建物で、ロアーメイン通り(Lower Main Rd.)から入った開けっぴろげの待合室には、地元の人が沢山診察を待っている。
ホテルから連絡してくれていたのか、タクシーを降りると、助手らしい若い男性に別室に案内された。
簡易ベッドの上に座って、検温しながら、症状を聞かれる。
「diarrhea」と言い、「吐く」は手真似で伝える。「嘔吐」の英語「vomiting」がどうしても出て来なかった。特に発熱は無い様だ。
暫らくして、ロンジーを履いた、理知的な容貌で恰幅の良い年配の男性医師が入って来た。「ロンジー」は、ミャンマーで男女とも日常的に着用している民族衣装で、下半身を長いスカートの様に履く筒状の衣類だ。
簡易ベッドに座った私の脚を、脚気の診察の様に膝をハンマーで叩いて「腱反射」を診たり、横になってお腹を押して痛いか聞いてくる。ホテルで大量の嘔吐をした後だったが、特に痛みは無かった。
3日分と言って、7種類の薬を出してくれた。
受付で、全てビルマ(ミャンマー)語で記載されたカルテの様な小冊子とレセプトを貰った。支払いは、海外旅行保険の証券を見せたが、知らない様子だったので、現金で14,000Ks(約1,120円)支払った。
待っていて貰ったタクシーに、ホテルまで送って貰う。5,000Ks(約400円)。
そうだ⁉、原因は何だったのか、聞くのを忘れていた!!
ホテルに戻って、ベッドの上で貰って来た冊子を見直してみるが、全てビルマ語だ。でもどうやらカルテらしい。
Google翻訳で見てみるが、表紙の印字された文字は少しだけ分かったが、肝心な中身は医師の手書きで、どこの国も医師の筆跡は判読できないと相場が決まっている様に、全く分からない。
でも、連れて行って貰ったあの病院は、街中にある町医の診療所ではなく、州立病院で「第8地区病院」と書いてあった。本当に「町に1つしかない病院」だった様だ。
医師の名前は「キム・チー博士」。
下方の注意書きには、「ご来院の際は必ずこの本を持参ください。」と「薬にアレルギーのある方は、事前に医師に伝えてください」と記載されている。確か診察のとき、医師に薬のアレルギーについても聞かれた様な気がする。
レセプトでは「Particular」で「CF」が14,000Ksと書かれている以外、医薬品欄には
金額が入っていなかった。
でも日本で「CF」って、大腸の内視鏡検査のことじゃない??
もちろんミャンマーでは違うだろうけど、「Colono」は大腸のことらしいので、多分それに関する診察の意味なんだろうか。でも別に下痢や大腸疾患用に誂えたレセプトじゃない様だし、汎用の用紙に印字してあるから別の意味じゃないかなぁ。分らない。
ホテルに戻ってから娘にメッセンジャーをおくる。
「いま帰って来ました。ローカルの人ばかりの診療所だったけど、早く診てもらえたので助かった。沢山の薬を貰って来ました。病院に行く直前に大量に吐いたので、吐き気が収まり少し楽です。」
早速貰って来た薬を飲み、横になる。
原因は、多分だが、昨日の「Win Sein Tawya」のローカルな店の餡かけ焼きそばが不衛生で、細菌性の食中毒に罹ったと言う様なことではない様に思う。
多分ミャンマーに入ってから食べている食事が、味が濃く、油が多くて、日本人の胃や腸には耐えきれなかったのだと思う。
昔イタリア旅行に行った日本人観光客が、良くお腹を壊したというが、これもオリーブオイルを多用する食事が原因だったと聞いたことがある。
私はいままで、旅行中に風邪で寝込むことはあっても、1997年の最初のインド旅行のとき以外、お腹を壊したことが無かったので、油断していたのだ。
夕方になると雨が降る。しかも物凄い豪雨だ。そのうち雷がなり、バシッ‼︎と響くような低い音がして停電になる。
真っ暗な中、病気がいつまで続いて、これからこの旅行はどうなるのだろうとボンヤリ考えている。