<5日目>
1997年11月16日 日曜日 プリ―(PURI)、コナーラク(KONARK) 晴れ
ひょんな行きがかりで、Rs.125(約438円)のゲストハウスから宿替えし、昨日からRs.2,000(約7,000円)のプリ―の豪華ホテルに泊まっている。
<コナーラクKonarkに行く>
泊まっているHotel Nilachal Ashokのダイニングで朝食を摂りながら、ボーイの人にコナーラク(Konark)に行きたいが、オートリキシャで行かれるか聞くと、大丈夫だと。
レセプションで、コナーラクに行きたいと話す。タクシーか、オートリキシャかと聞かれたので、オートリキシャを依頼する。料金は往復でRs.150(約525円)と。
他にホテルへのCommision が、Rs100(約350円)必要らしい。
コナーラクは、プリ―から1時間ほど北上したベンガル湾(Bay of Bengal)沿いの村だ。何と言ってもそこの「スーリヤ寺院」(スーリヤは太陽の意味 Surya Mandir)で有名だ。
しかしこの寺院も見てみたかったが、あの忌々しいプリ―ホテルの窓から僅かに覗いたのを除けば、プリ―に来てからまだ一度も海岸を見たことも、浜辺を歩いたことも無かったので、ベンガル湾の海岸に行ってみたかった。
今日は青いシャツをランドリーに出してしまったので、一昨日買ったばかりの白いインド服のクルタを白いティーシャツの上から着た。ズボンはチノパンのままだ。
オートリキシャをHotelの車寄せまで来て貰って、乗る。
サイクルリキシャは駄目だったが、オートリキシャはこの敷地内にまで入れるらしい。ドライバーは青いシャツを着た、髪の毛の豊かな細いが筋肉質の若い男性だ。
ホテルを出るとChakratirtha.Rd.を行き、突き当たりのサンタナロッジを左折。舗装の悪い赤い道を、エンジンの甲高い音を響かせながら、地面の凹凸を拾って激しく振動しながらひたすら走る。
オートリキシャは、クッションは悪いが何と言っても開放的だ。直に地面の上を走っている感じがするし、開けっぴろげで吹き込む風も心地良い。この位の距離なら、タクシーなどより遥かに楽しい。
途中ドライバーは道端でリキシャを停め、オイルを売っている店からペットボトルに入ったガソリンを買って燃料タンクに入れる。
Rs30(約105円) / Lと言っていた。他のものの物価に比べ、ガソリンはとても高い。
途中の露店で一緒に水を買う。ミネラルウォーター Rs.12(約42円)。
バス通りへ出て、今度は一面の田園地帯の中をひたすら走る。コナーラクまで約1時間だ。
<スーリヤ寺院(Surya Mandir)>
オートリキシャは私が何も言わないのに、スーリヤ寺院(Surya Mandir)の入口で停まった。
コナーラクに来る人の殆どが、この寺院への参拝や観光が目的なんだろう。
入口を入ると直ぐに白いクルタ・パジャマ姿の仙人の様な髭の老人が現れて、指で持ち上げながら「Gov. of Orissa」と書かれた胸の名札を見せる。
わざとらしい仕草に、大丈夫かとオートリキシャのドライバーを振り返るが、ドライバーも当然と言うように、彼に付いて行けと言う。
ガイドが必要とは考えてもいなかった。胡散臭い気がしたのでオートリキシャのドライバーも一緒に付き合って貰い、寺院を見始める。
中に入ると巨大な石造りの神殿が現れる。
13世紀に建てられたというオリッサ(Orissa)建築の代表的なヒンドゥー教の遺跡らしい。見上げていると、横の老人が英語で滔滔と説明を始める。
神殿は太陽神「スーリヤ」に捧げられたもので、全体が7頭の馬に牽かれた馬車の様な形をしている、と言っているらしいが、細かいことは殆ど聞き取れない。
しかし確かに車輪の様な彫刻や、馬の彫刻もある。でも目を奪われるのは、神殿の壁一面に彫られた「ミトゥナ(男女交合像)」だ。
初めは風化して壊れかけていたため何が彫られているか分からなかったが、よく見て「ミトゥナ」と解ってから、更によくよく見るとなかなか凄い像だ。
男女が様々な体位で交わっていたり、女性が男性のものを握っていたり、抱き合った男女の脚の下からもう一人の女性が顔を出していたりと。
「ミトゥナ(男女交合像)」はインド北部の内陸にあるカジュラーホー(Khajuraho)が有名だが、まさかその「ミトゥナ」が思いもかけずこんなところにもあったのかと感嘆してしまった。
そう思ってもっと良く像を観たいと思っても、横では老人が延々と喋りながら先へ先へと進んでしまう。
戻り掛けに、ガイドをしてくれた老人がもしかしたら本当に「Gov. of Orissa」の役人で、「ガイド料?!参拝者への案内は、これは役職で無料ですよ」と笑って答えるかもしれない。
そんな一抹の期待をもって、幾ら払うのか聞くと、平然と「Rs.250(約875円)」という。
片道一時間かけてきたオートリキシャが、往復でRs.150だ。このボッタクリがと思うが、手持ちがRs.100(約350円)しかないといって頑張り、それだけを押し付けて出てきた。
ドライバーにはクレイジーなFeeだと言ったが、彼は黙っていた。
<コナーラクの海岸>
コナーラクの海岸に出る。青く透き通った海、ベンガル湾(Bay of Bengal)だ。
「海沿いの保養地」プリーに来てから、実際に海岸に出たのは初めてだ。波打ち際では、男はルンギー、女はサリーのまま、腰まで浸かっている
私も靴を脱いで、ズボンの裾を捲って足だけ浸すが、水は温かい。
海岸は美しいが、朝方、現地の人たちはこの海岸で用を足すと聞いたことがある。
ドライバーが「You don`t swim?」」と聞く。多分此処を訪れる欧米人は皆服を脱いで、嬉々として泳ぎ始めるのだろう。
「I have diarrhea.」と残念そうに言う。
貴重品を腹巻の中に入れているのをドライバーに見られるのも恥ずかしいし、預けるのも躊躇されたが、なにより海に浸かってこれ以上下痢を悪化させたくない。
海岸傍の売店で、ピクチャーカード Rs.20(約70円)とミネラルウォーター Rs.16(約56円)を買う。
PM1:00、ホテルに戻る。車寄せに着けてくれたオートリキシャのドライバーに、代金Rs.150(約525円)と、チップRs.10(約35円)を渡すと初めて笑顔を見せた。
<インドでビール>
部屋に戻ってしばらくすると、昨日の夜来た従業員がまた部屋に来て、小声で「ビアーBeer?」と聞く。
どうもインドではおおっぴらには飲酒が出来ないらしい。お腹の調子は余り良くないが、喉が渇いていたのでついその気になって頼む。
グラスと一緒に、インドのビール「Black Label」が来た。大分寝かせてあったらしく、栓の部分を覆う白い銀紙が埃に汚れている。ちょっと苦く感じたが、喉越しは上手い。
レストランでDinnerを食べる。他に客が居ない。それでも厨房では何人かの声が聞こえている。
デザートは縦横10cm、高さ5cm位の巨大なアイスクリームだ。下痢をしているのだからこれは拙いだろうと思ったが、味見だけと思って端の部分をスプーンで掬って食べる。
上手い。これが牛乳だけで作る本物のアイスクリームだよと言っているかのようで、味が濃くまろやか。
お腹を心配しながらも、私一人のために何人もの人が作ってくれたのに、残したりしたら申し訳ないと言い訳しながら、みな食べてしまった。
部屋に戻り、また少し下痢(笑)。
寝ていると、ボーイが出来上がった洗濯物を持って来る。青いシャツ×1、ティーシャツ×2、パンツ×2、タオル1だ。下着まで丁寧に畳んである。ランドリーの料金は Rs.46(約161円)。
夜になって、あの鉄道の切符を頼んだ男性の従業員が来て、「Puri-Howrah Exp. 1st Class A/C 」のチケットを持って来た。
チケットには料金がRs1201(約4204円)と書いてある。
昨日渡したのはRs1400(約4900円)だったので、Rs119(約417円)が手数料なんだろう。プリ―駅の窓口で、求める切符がことごとく「No,」と言われた光景が蘇る。高い手数料だが、とにかく入手出来て良かった。
しかし、今日のオートリキシャの運賃、スーリヤ寺院のガイド料、下着まできれいに畳んであるランドリーの値段、列車の切符の手数料、一体この国の値段はどんな風に決まっているんだろう、不思議でならない。