歳をとっても旅が好き

海外ひとり旅の記録?いや記憶かな

南インドひとり旅(1999年) <15> まだ6日目 出会った2人とコーヒーハウスで夕食

<6日目ー2
1999年 2月25日 木曜日 トリヴァンドラム(TRIVANDRUM) 晴れ
昼からは「KTDC’s Luxury Coach Tours」に参加して、念願だったコヴァラムビーチなどを廻って来た。

<2人との出会い>
Receptionで部屋のキーを貰って、部屋に戻るためロビーを通り抜けようとすると、真ん中にあるソファーに大きなザックと一緒に、ジーパンにグリーンのティシャツ姿の日本人らしい女性が座っていた。

部屋に戻って顔を洗う。今晩の夕食は昨晩の不味いホテルのレストランではなく、隣のコーヒーハウスにしようと、エレベーターを降りてロビーに行くと、先ほどの女性の側で立ったままのインド人の男性が盛んに話しかけているところだった。脇を通り抜けようとすると、突然女性が「すいません!」と日本語で話し掛けて来た。

振り向いて「何でしょう?」と言うと、「しつこくされて困っている」と。私が近づいていくと、インド人の男性はすっと離れて行った。
事情を聞くと、今晩隣のBUS STAND から22:00のBUSでマドゥライに発つ予定だが、それまでの間此処で待つ積りが、あのインド人男性にしつこく誘われることになってしまったらしい。
自分は女性二人で旅行しているが、もう一人はトイレに行っていると。

暫らくしてジーパンに赤いティシャツ姿の女性が戻って来た。よく見ると二人とも日に焼けている。二人はヨーロッパから旅行して来たらしい。
私が居なくなったらまた同じような災難に遭いかねないと思い、私の部屋に荷物を置いて、一緒に食事に行かないかと言って、近くにあるユニークな建物のインディアン・コーヒーハウス(Indian Coffee House)に誘った。

<インディアン・コーヒーハウスでの夕食>
インディアン・コーヒーハウスは、4階建の茶色の渦巻きの様な、ユニークな螺旋形の建物だ。壁には三角形の穴(窓)が幾何学的に並んでいる。
中に入ると一階から二階、三階へと、階段が無く、床そのものが螺旋状に傾斜しながら上へ上っている。

インディアン・コーヒーハウス

コーヒーハウスの室内 三角の穴は窓

食事をするテーブルも、その螺旋状に続く傾斜面の上に、壁に沿って置かれている。何か平衡感覚が失われてフラフラする様な落ち着かない雰囲気だったが、久しぶりに会話しながら他人と一緒に食事をすることが楽しかった。
彼女たちが行こうとしているマドゥライへは、行って来ましたと言うと、何処から来たのですか?と聞くので、チェンナイから入ってマドゥライに行って、昨日カニャークマリから此処まで来たのだと言う。2度目のインド旅行だが、勤め人なので長い休みが取れず、細切れに短期間の旅行だと言った。

彼女たちは何とパキスタンから国境を越えてインドに入り、ムンバイから南下して来たらしい。
ひとりで旅を始めたばかりの私には想像もつかないが、アフガニスタンが通れないいま、国境はどのルートを通って来たのかなどを訊ねた。イランやパキスタンは厳格なイスラム国家だと聞いていたので、若い女性だけの旅行者がこうして無事に、しかも淡々とした様子で旅行して来たのを聞くと驚きだった。

聡明そうでしっかり者の赤いティシャツ姿の女性は、英語が上手く、注文もすべて彼女がやってくれた。相棒の緑のティシャツを着た女性は、明るく快活だが、そこまで英語が堪能ではない様だ。
私のような「not good」の英語では出る幕が無いが、ひとり旅では話さざるを得なかった。英語の堪能な相棒と旅行するのが良いか、ひとりで難行苦行しながら行くのが楽しいか、どちらが旅行の醍醐味なんだろう。
食事代3人分を払う。Rs.64(約224円)。

食事のあと、ホテルに戻って私の部屋に行く。
顔を洗いたいと言うので、良かったらシャワーを使ったらと言うと、歯を磨いたり、着替えをしていた。

交替に話を聞くと、昨年の2月にヨーロッパから旅行を始め、トルコ、イラン、パキスタンを経て、漸くインドに来たらしい。1年近く旅行をしているのだと。その百戦錬磨の女性が、男性にしつこく付きまとわれて困っているなんてと、好感が持てた。
一人は東京の代々木、もう一人は山口の人で、いずれも20代後半くらい。会社を退職して旅行に出たのだと。
私が学生の頃働いていたアルバイト先でも、一緒に働いていた20代後半の2人の女性が、こうしてアルバイトしてお金を溜めて、また海外に旅行に出るんだと言っていたのを思い出す。あの頃は、ああ、そんな生き方もあるんだなァと感心して聞いていた記憶があるが。

私は明日帰国の予定なのでと言って、日本の旅行会社で貰ったインド鉄道の時刻表「Trains at a Glance」やビオフェルミン、蚊取り線香などを渡す。
彼女たちは今日のストライキで両替が出来ず困っていると言うので、私の残ったルピー札(Rs.1,000 約3,500円)を渡す。彼女たちは断ったが、私は明日帰るし、両替の際Bank Receiptを貰い損ねて無いので、どのみち再両替が出来ないのだと言って渡す。
私のアドレスを書くよう言われた。旅の途中でレターを出すと。

しばらく話し込んでいたが、21:00になったので出掛けると。
一緒に6階の部屋を出て、ロビーで通りかかったインド人の旅行者に頼んで、三人で写真を撮って貰う。
ホテルの玄関で握手をして、「また会いましょう。」「気を付けて。」「今度は飲みに行きましょう。」と言って別れた。
二人は夜の街に出て、振り返って手を振った。私も振った。

部屋に帰って荷物をまとめる。帰国の準備だ。
先ほど部屋で、彼女たちが聞いた「帰りたいですか?」との問いに、私は「帰りたくない」と答えた。