歳をとっても旅が好き

海外ひとり旅の記録?いや記憶かな

南インドひとり旅(1999年) <16> 7日目 旅の終わり・帰国

<最終日 7日目
1999年 2月26日 金曜日 トリヴァンドラム(TRIVANDRUM) 晴れ

<トリヴァンドラム空港>
朝4:00に起きる。よく寝付かれず、2:00、3:00にも物音で目が覚めた。
顔を洗って歯を磨く。昨日彼女たちに渡す前に、残しておいた最後のビオフェルミン5錠(1錠床に落としてしまった)をミネラルウォーターで飲む。
まだ陽が出ていないので涼しい。

4:50、レセプションで2泊したホテル・チャトラム(HOTEL CHAITHRAM)をチェックアウト。
Rs.1,610(約5,635円)を現金で支払うも、バンクレシートを見せろとも言わない。
横からベルボーイのおじさんが、「Airport? Taxi? 」と聞くので「Yes.」と言うと、間もなく玄関にタクシーが停まった。
荷物のサブザックと買い物を包んだビニール袋を、アンバサダーのトランクに入れ、後席に乗り込む。

ホテルの請求書(BILL)

まだ暗い道を、クラクションを鳴らし続けながら疾走する。何でこんな誰もいない早朝からクラクションを鳴らすのかと訝しく思っていたが、ヘッドライトに照らされた先には、もう沢山の人が歩いているのが見えた。
ドライバーが「International?」と聞くので「Yes」と答えたが、Domesticは別の場所にあるらしい。

工場の塀のようなところを曲がると、玄関に沢山の人と車が見えた。まるで昼間と変わらない喧噪だ。しかも周囲の暗闇の中で、そこだけ玄関の照明に照らされていて異様な光景だ。
5:15、空港着。ホテルのレセプションでは30分位と言っていたが、15分位で空港に着いた。
タクシー料金はRs.200(約700円)と言われて、ずいぶん高いと思うがここで争っている場合ではない。

空港ターミナルビルの建物の中に入るとセキュリティチェックがあり、預入れ荷物のX線検査がある。私は機内持ち込み荷物だけなので脇を通り抜け、奥のチェックインカウンターに向かう。
中はニューデリーの空港の様な近代的な設備ではなく、デパートの集配所の様に、頭上に「Air・Lanka UL162」の札がぶら下がっている。
行ってみるが誰もいないので近くの係員に聞くが、訛りの強い早口の英語で言われ理解できない。
相手は嘲笑する様な苦笑をして時計を指すので、フライト・クーポンの入っていた封筒に書いてもらう。チェックイン・スタートは6:30からで、まだ始まっていないと書かれていた。

銀行の窓口で、airport・taxの支払いが必要か聞くが、先にチェックインしろと言われる。あれっ?以前はairport・taxのレシートを、チェックイン時にボーディングパスの後ろに貼り付けていたはずだが。
6:30、無事チェックインし、ボーディングパスを貰う。airport・taxのことは何も聞かれなかった。シートは、No.2F。
荷物は「Carry-on baggage only」と言って、1st. classのタグを貰う。そう、私は初めて1st. classに乗る。しかしこれは日本で予約するとき、単にeconomy classが取れなかったというだけの理由だ。
青い出国カードを貰って記入する。

しかしこんな早朝なのに、人が多い。
見ると男女ともほとんどはコロンボ経由で中東などへの出稼ぎの人達の様だ。皆が皆、沢山の荷物を持って並んでいる。ビニールシートの上から紐で縛った様な大きな包みや、くたびれたようなボストンバック一つという人もいる。しかし皆旅行に行きますと言う様な服装ではなく、普段着のままの服装の人が多い。中にはサンダル履きの人もいる。

<インド出国>
出国する人が多いので、直ぐにImmigrationに並んだ。
係官がパスポートの写真と私の顔を見比べて、不審そうな顔で「名前は?」と聞く。答えると、席を外してコンピュータの端末の前に座っている係官に相談しに行く。振り返って呼ぶので傍まで行って待つと、OKが出たようで無事通関出来た。
パスポートの写真は白黒のスーツ姿。今は真っ黒に日焼けして髭面だ。分らないのも無理はないかな。

Customはどこにあるのか分からなかったが、人だかりのしている中に行くと、ボーディングパスの上に「AIR CUSTOM Cleared」のスタンプを押してくれた。

階段を上がって行くとまたセキュリティチェックだ。
此処も長蛇の列だ。
チェックの際、置き引きなど盗難防止のため日本から持って来た、ダイヤルキー付きの自転車用チェーンロックを没収される。これはひとり旅で、夜行寝台車やトイレなど、止むを得ず荷物を手元から離さざるを得ない時、ザックを椅子などに括り付けるために、日本でわざわざ買って行ったものだ。
危険物でも無いのにと思い「Why?」と訊くが、係官は知らんぷりだ。
仕方ない、ここでトラブルになって留め置かれたら大変なので、やむを得ず諦める。インドでは毎回こんなことが起きる。
しかし、前回のインド旅行では取られたカメラ用の予備の乾電池は、今回は大丈夫だった。

小さな二層のターミナルビルの建物から、駐機場に出る。
外に出ると荷物のチェックに行けと言われる。自分は「Carry-on baggage only」と背中のザックを指しながら言って、飛行機に向かうBUSに乗り込む。
私の隣にいた、出稼ぎに行くと思われる大きな荷物を持ったチャッパル(サンダル)を履いたままの小柄なインド人男性は、走り出したBUSの窓から、もう見えるはずも無いターミナルビルの見送りの人にずっと手を振っていた。

飛行機に乗り込む時も、再度手荷物のザックを開けて点検され、ボディーチェックを受ける。
1st. class、A2シート。初めての1st. classだが、座席が前方にあるだけで、いつものeconomyと変わらない。特段期待もしていなかったが(笑)。
9:30、トリヴァンドラム空港を出発。インド出国。

<スリランカ・コロンボ空港は雨 帰国へ>
10:45、コロンボのバンダラナイケ空港に着陸。インドとスリランカの時差は無いから、僅か1時間15分のフライトだ。

直ぐにトランジットルームに向かう。
此処から成田空港行きの便は夜の出発だ。10時間の長いトランジットが待っている。
今朝の出発が早かったので、空いたベンチに横になって寝ていたら、外は雨になっていた。
雨に煙った窓から、飛行機が滑走路までタキシングして行く姿をずっと見ている。

そういえば、バンダラナイケ空港って、世界初の女性の首相になったシリマヴォ・バンダラナイケ(Sirimavo Bandaranaike)さんの名前を冠したのかなぁ。そう思って調べたら、そうではなく、彼女の夫で同じく元首相のソロモン・バンダラナイケ(Solomon Bandaranaike)さんの名前を冠したらしい。
しかし奥さんのシリマヴォさんも、1960年当時、女性が一国の首相になるなんて考えられなかっただろうし、ましてや女性軽視の風潮が強いと思われていたアジア圏での出来事だったので、世間は驚いた様だ。

18:00になりお腹が減ったので食事をしたいと思うが、米ドルの現金が$2しかない。仕方なくトラヴェラーズチェックで、日本へのお土産に紅茶を買う。
会社、親戚、友人、家の分など10個、合計$40だ。トラヴェラーズチェック$20を2枚切り、あと$20を1枚、店で現金に両替してもらう。
お土産の山は、私のサブザックより大きい。いくら自由に旅がしたいと海外に出ても、これが日本の会社員の旅行かなぁと苦笑が出る。

レストランで$9のビーフステーキを腹いっぱい食べる。
スリランカは仏教国だから、此処では普通に牛肉が食べられる。これで暫らく食べなくても大丈夫だ(笑)。

20:45、No.1ゲートから「UL454」に搭乗。機体はトライスター、シートNo.32D。今度はEconomy Classだ。
コロンボから成田空港へ離陸。

成田空港へのボーディングパス

機内はモルディブ帰りの若者でいっぱいだ。唯でさえ騒々しいが、大声上げても誰も注意しようとしない。金曜の夜の居酒屋の様だ。
私の後ろの席で、隣同士の若者が大声で怒鳴りあい、果ては手を出して殴り合いになったらしい。男性のスチュワードが慌てて飛んできて、どちらかを離れた席に連れて行った。

翌1999年2月27日 土曜日、10:45、成田空港に到着。