<7日目ー2>
2024年7月28日 日曜日 KLそしてマラッカ 最高34℃ 最低27℃。
<私のバスは何処にいる?>
TBSのバスターミナルの待合室にいる。もう11:15を過ぎている。
私の予約した11:30のバスは、発車ゲート前の発車標になかなか現れない。
反面、12:00過ぎや、13:00過ぎのバスなどが表示されている。一体どういう順に表示されているのだろう。しかしいずれも行き先は「Melaka」(マラッカ)だ。
バス番号というようなものは、チケットには書いていない。本数が少なければ、バス会社名や時間と行き先だけで判断出来るが、時間がこれではどのバスに乗るのか分からない。
業を煮やして、入口にいる係員にチケットを見せるが、首を振るばかりだ。
せっかちな日本人の性かなぁと自嘲気味に感じていたが、他の乗客も係員のところに次々に行っては、同じように聞いているが、みな違うと言われている様だ。
ネットなどの情報では、マレーシアのバスは、安価で便利だが、時間の遅延は当たり前だと書かれていた。しかし、既に時刻は11:30を過ぎている。
2番ゲートでは、未だ11:55なのに13:15発のバスに人が乗り込んでいる。
一体どうなっているんだろう?!
再びチケットを持って行き、入口の係員に見せると、突然チケットを手に取るなり、いきなりペンで、出発ゲートを2番にして、出発時間を12:30に書き直した。
「Change Bus?」と聞くと、面倒くさそうに、そうだと。
12:20、また2番ゲート前にバスが来たので、係員に「No!」と言われようが構わないと思い、出発ゲートに並んでみる。
私と同じように何度も係員に聞いていた周囲の人も、並んでいる。
係員にチケットを見せると、意外にも入れと言うので、呆気にとられながらもバスの横の荷室にキャリーバックを入れて、車内に乗り込む。
マレーシアのバスは、乗客が自分の荷物は自分でバスの荷室に入れる方式だ。
車内に乗り込むと、予約していたバスは3列シートのはずが、これは草臥れた様な4列シート。
これでは3列シートのひとり用シートで予約した番号も意味が無さそうなので、適当に真ん中の窓際席に座った。
このバスに乗り込んで良かったのか心配なので、後から隣に座ってきた華人の年配の女性に、「Excuse me. Is this BUS going to Melaka Sentral, right? このバスはマラッカ・セントラル行きですよね」と確認すると、幸い「Yes」と。
あちこちで、席はどうなっているのかとチケットと見比べている人がいるが、「フリーシート!!」という声が飛び交っている。
どうも何かの都合で、予約した何台かのバスが出ず、積み残した乗客をまとめてこのオンボロバスに詰め込んだ様だ。日本人の子供を連れたお母さんも、乗り込んでいた、
12:30出発。えっ?!チケットに書き直した出発時間に、今度は正確なのでびっくりした。
しかし、実際に私が予約したバスは、12:30にあったのだろうか。
早まって、違うバスに乗って仕舞ったのだろうか。
今乗っているバスも、自分が事前に予約していたバスだとは思っていなかったが、何となく聞いてみるつもりで、カウンターの係りの弾性にチケットを見せただけだ。そうしたら乗れと言われた。
ということは、あのまま予約したバスが来るはずだと信じて待って居たら、どうなっていたんだろう。
それこそ積み残されてMelakaに行けず、何の説明もないまま、次第に人気のなくなるあの待合室のベンチに、茫然と座っているだけだったのだろうか。
<マラッカ・セントラル>
TBSを出たバスは、何処にも止まらずLebuhraya Utara-Selatan/E2南北高速道路E2線をひた走る。マラッカMelakaまでは2時間半くらいと聞いていたので、多分トイレ休憩も無いだろう。
14:30過ぎ、マラッカ・セントラル(Melaka Sentral)に到着。約2時間。思ったより早く着いた。
ここはジョホールのラーキン・バスターミナル(Larkin Terminal)に似た規模の、ローカルなバススタンドだ。
乗客はバスの荷物室から自分の荷物を降ろすと、皆あっという間にいなくなった。
私はひとりターミナルの建物の、ローカル感漂う薄暗い通路の真ん中で、これからどうしようと思案していた。
取敢えずトイレに行こう。
キャスターの車輪のゴムが一部剥離して、床に引っかかって上手く動かないキャリーバックを引き摺りながら、入口でコインを並べて座っている、トゥドン姿の老齢の女性の前にRM1札を出して、コインのお釣りを貰ってトイレに入った。
長距離バスが停まるサイドの丁度反対側に、ローカルバスが発着するエリアがある。ここからオランダ広場行のバスが出ているはずだ。確か「17番」のバスだ。
そこからホテルは近いはずだが、しかし果たして、壊れかけたトランクを押しながら歩いて行ける距離かは分からない。
自分にGrabが使えたら、これ一択なんだがなァ。そう思って通路を引き返す途中、明るくなった出口があり、その先にタクシー乗り場が見えた。
<マラッカのタクシーは>
どこかの記事で、マラッカのタクシーはぼったくりだという体験談が載っていた。
まあ、それでも良いか。他に、ホテルに行く手段は思いつかない。
入口まで行って、何台か並んだタクシーの先頭の運転手に、住所の書いてあるホテルの予約票を見せながら、「How much?」いくらだと聞く。
前歯の抜けた痩せぎすのインド人のドライバーは、周囲の仲間に聞いて、RM20(約680円)だという。いい加減な値段の付け方だなァと思いながら、一方で案外法外にはぼらないんだなぁと思ってOKする。
赤白に塗られたくたびれた様なタクシーは、高速道路を飛ばしていく。
運転手の背中越しに、「Permisi, Otomobil ini Proton? すいませ~ん、この車はプロトン?」と、声を掛けた。
マレーシアで作っている乗用車で、唯一知っている車名だった。
いま東南アジア各国は自動車生産が盛んだが、殆どが日本車や韓国車などを生産している。自国に国産の自動車会社を持って、国産車を作っているのはマレーシアだけなのだ。
確か1983年に、時のマハティール(Mahathir bin Mohamad)首相の提唱で、スランゴール州に「Perusahaan Otomobil Nasional」(国民自動車会社)を作り、会社の略の「Proton」と言う名前の国産車を生産し始めたのだ。
その車がどんな車で、一度は乗ってみたいと思っていたので、もしかして今乗っている車がそうなのか知りたかったのだ。
確かエンブレムは日本車や韓国車とは違っていたので、もしやと思って聞いてみた。
すると、何の興味もなさそうに、「Ya はい」と一言ボソッと言ったきりで黙ってしまった。
タクシーはオランダ広場に続く一方通行の通りの入口まで来ると、此処からは車は入れない。
ホテル?、ほらあの黄色いパラソルのすぐ先だからと、私を降ろした。
見ると、左右に赤錆色のショップハウスが続く、道幅の狭い通りが交通規制されていて、通りの真ん中に屋台と黄色いパラソルが立っている。
RM20の運賃を払って降りた。
あんまり極端なぼり方じゃなかったが、距離からすると凄く高い気がした。