<8日目ー4>
2000年 3月16日 木曜日 アムリトサル 晴れ
パキスタンのラホール(LAHOR)からインドへ、「ワガーWAGAH・アターリーATARI」国境(Border)を越えている。
<インド・アターリ―国境>
バリケードの向こうに数台のMini Busやオートリキシャ、沢山の人が立ち働きするのが見えた。
インド側のイミグレーションやカスタムを通過してから、ここまで誰にも誰何されないまま歩いてきたが、これで国境越えも終わりかと思った途端、右端のベンチで休憩していた兵士に止められた。
何か出せと言っている。早口で何語を喋っているか解らない。Passportはcheck済みだし、スタンプも押してあるし、CustomでDisembarkation Card も出したしと思った途端、思い出して胸のポケットからCardの半券を取りだして差し出した。それをチラッと見て取り上げると、首を振って行けという合図をした。
この国境は、自分から申告していかないとそのまま通りすぎてしまうような感じだが、やはりCheckはしているんだと改めて感心した。
日本なら行く先々で係官が待ち構えていて、否応なく手続きをさせてしまうが、こちらはImmigrationのスタンプやCustomの半券が必要なら建物も係官も自分で捜しなさい、要らなければどうぞといっておきながら、後でちゃんと手続きをしているかCheckする。お国柄なのかなと思ってしまう。
そうだ、改札のある日本の鉄道駅と、改札は無いが乗車後途中で検札に来るインド鉄道の違いかな。
国境のインド側最寄りの町はアターリ(Atari)だが、「Suzuki」の軽バンのタクシーで直接アムリサルAmritsar へ向かうことにした。
確か30Km少しの距離だったはずだが、Rs.200(約700円)だと。さすがに国境だからか、随分高い。
インドとパキスタンに跨がるパンジャブ平原を通る、現在は「NH1」国道1号線となっているGTロードを、東へと進む。
<アムリトサルに着いたが・・・>
アムリトサル(Amritsar)の鉄道駅「アムリトサル・ジャンクション駅(Amritsar Junction)」の前で降りる。
早めに投宿しようと、ガイドブックで「アムリトサル駅前の宿」「親切でおすすめのホテル」と書かれ、今晩は此処にしようと決めていた「Hotel Palace & Pegasus」をガイドブックの地図を頼りに探すが、どうしても見つからない。
仕方なく通りかかったサイクルリキシャに乗って、連れて行って貰うことにする。私がホテル名を言って「Do you know this hotel?」と聞くと、黙って頷いたので、料金をRs.10(約35円)で握って乗り込んだ。
すぐ走り出したが、さっき私が捜しながら歩き廻った辺りをぐるぐる廻り、果ては鉄道の線路を跨ぐ跨線橋を、息を弾ませて越えて行く。
さすがにガイドブックの地図とはかけ離れた場所だ。その上何処まで行っても着かない。大分走った末に、リキシャ・ワーラーに再度ホテルを知っているのか聞くが、曖昧な返事しかない。仕方ないので駅前まで戻って貰う。
駅前で降りて、当初のRs.10を渡そうとすると、言葉は正確には分からないが、リキシャ・ワーラーは走った分だけよこせと言っている様だ。
私も、体調の悪い中ようやく国境を越えて此処まで辿り着いて、直ぐにホテルにcheck inしたかった。
しかし頼んだホテルの場所を知りもしない癖に走り出して、無駄にぐるぐる廻った挙句にはホテルには着けず、結局時間の無駄をさせたのはどっちだと、腹がたってきた。
私はワーラーに、「You don’t go to the hotel that I said!!」あんたは私が言ったホテルに行ってくれて無いじゃないかと、稚拙な英語で意味が分かってもらえるかと不安ながら、勢いで語気強く言った。
しかしリキシャ・ワーラーの自業自得とはいえ、あの跨線橋を、息を弾ませて、行き帰りで2度も越えて大変だったのも事実なので、最初に握ったRs.10(約35円)ではなくRs.20を渡して歩き出した。
するとRs.20でも納得しなかったのか、後ろから意味は判らないが、リキシャ・ワーラーの乱暴な罵声が聞こえて来る。
私も、こっちこそ被害者だ!「コンチクショー!」と思って、駅を離れてGrand Trunk Rd.を更に東にスタスタ進んでいくと、道が二股に分かれる角に「Grand Hotel」と言う看板の架かった小さなホテルが目についた。ここに飛び込んだ。
<Grand Hotel>
Grand Hotelは、AmritsarのRailway Stationの前を通るGrand Trunk Rd.が、南北に走るAjnala Rd.と交差する前に二股に分かれ、斜め北に通っているQueens Rd.沿いにある。
名前とは裏腹にこじんまりした安いホテルだったが、飛び込んで仕舞った手前、ここに泊ることにした。
203号室。部屋はセミダブル位のベッドに、椅子やテーブルのセットのある広めの部屋だ。Non A/Cだが、お湯のシャワーが使える。宿泊料は、1泊でRs.395(約1,383円 税金込み)だった。
部屋に入ると、何度も洗濯して糊のとれた様な皺の多い白い制服を着た年老いたボーイがやって来て、そっと「Beer King Fisher?」と聞く。
以前1997年に行った北インドのPuriプリ―のホテルでも、同じように「そっと」Beer?と聞かれたことがあった。インドではアルコールのオーダーは「そっと」聞いてくるようだ。
体調は悪かったが、漸くパキスタンからインドへのBorderも越えてホッとしていたので、頼んだ。
運ばれてきたBeer「 King Fisher」は、瓶の口から首部に掛けて覆っている銀紙が埃で汚れている。これも3年前にPuriで飲んだ「Black Label」の壜に付いていた埃と同じだ。それだけインドではビールの需要が少ないということだろう。その場でRs.84.7(約297円)を支払った。
理由はともあれ、このビールの値段と比べたら、確かにあれだけ漕いでRs.20ではリキシャ・ワーラーが怒鳴りたくなる気持ちも分かる。悪いことをしたかなぁ。
開けてコップに注いで飲むと、喉の爽快感より苦みが口いっぱいに広がった。
このホテルもDiningという部屋が無く、夕食に頼んだChicken Chop(Rs.80 約280円)、Tomato Soup(Rs.30 約104円)、Roast Chicken(half)(Rs.95 約333円)、Tea(Rs.15 約53円)、ミネラルウォーター(Rs.18 約63円)、合計Rs.238(約833円)は、あの年老いたボーイが部屋に持って来てくれた。久しぶりの食事だ。