<6日目ー1>
2000年 3月14日 火曜日 ムルタン(Multan) 晴れ
昨日一日、ガイドと共にムルタンの街を廻った。
<病気になった!!風邪?をひいた!!>
ムルタンMULTANにいる。
風邪をひいた。朝起きたら、喉が猛烈に痛い。鼻が詰まり、体中がだるく、熱っぽい。一昨日の夜行BUSから、昨日は早朝の到着後にそのままMULTAN市内をガイドと一緒に回ったりと、ハードスケジュールだった。
それに、昨晩うがいをした時、喉がすっきりしなかったのを思い出した。
ムルタンは「暑さ、埃(ほこり)、乞食」で有名なくらい埃っぽい街で、新市街でも旧市街でも、街中でも建設現場の様な丘の上でも、常に砂埃がたつようだ。そして私が忘れていたのが、此処が乾燥地帯だということだ。この強い乾燥が、湿気の多い気候に暮らす日本人には知らずダメージを与えていたのかもしれない。
その中を、ガイドと一緒に勢いに任せて歩き廻ったものだから、今朝その付けが表れたみたいだ。なにしおう乾燥地帯なのだから、最初はもっと自重すれば良かった。でも今更詮方(せんかた)なしや。
ベッドの上で、白い天井を眺めながら、どうしようかと思った。
昨日ガイドと歩いて町の凡その概念がつかめたので、本来今日はひとりで足の向くままに歩き廻ってみる日かなと考えていた。
明日には再びラホールに戻って、今度はインドへと国境越えの算段をしなくちゃならない。この日程がハードスケジュールだったら、今日はムルタンの街歩きを諦めて、1日HOTELのベッドで寝ていればいい。幸い、このホテルにはRestaurant もある。
私は、辺鄙な場所に行くほど高めのHOTELを選んでいる。いざというとき、通信や食事など色々なところで便利だからだ。
体の具合の悪い時、外に出てRestaurantを探しに歩くことは大変だ。これは1997年の、最初のインドの旅で身に染みて分かった。
しかし、1日寝ているだけで、この風邪が治るだろうか。
私は日本での普段の生活でも、一旦風邪をひいたら、初期段階で治ることはまずない。重症か否かはその時々だが、常に鼻水や咳、喉の痛み、頭痛、発熱などの症状が更に進んでから、その後初めて回復に向かうという一通りのパターンを経ないと治らないのだ。
多分今回の風邪も、1日寝ていたから治るとは考えられない。
だんだん悪くなって、底を打つまで悪くなる可能性が高い。問題はその「底」が何日先で、その時何処にいるかだ。それまでにどうなるのかは、予想がつかない。
白い天井を見上げて、残りの旅行日程を考える。しかし、喉が苦しいのと、次第に熱が出てきたのか身体が上気して、考えが纏まらない。
予定では、MultanからLahore にもどり、そこから歩いてインドとのBorder 国境を越えて、インドのアムリトサルAmritsarに出て、鉄道でDelhiに戻り、其処から帰国の飛行機に乗る。
しかしいまの体調で考えると、それは長い長い、余りにも長い道程に思える。
最悪、体の具合が戻らなければ、国際空港のあるLahoreか首都のイスラマバードIslamabadまでなんとか行って、帰国便のticket を取り直してパキスタンから飛行機に乗るか。
それでも、大変な作業だ。とにかく、このMultan にいては日本への飛行機には乗れないし、休暇の期限の3月20日までには帰国できない。これが、短期間しか休暇の取れない勤め人の宿命だ。
では、まだ体力の有る内Lahore まで戻って、其処で様子を見たほうが良いのではないかと思い至った。
10:00、火照る身体で起き上がると、着替えて、少しでも体力を付けようとRestaurantでトースト、プレーンオムレツ、チャイ(2杯)の遅い朝食を摂る。
喉が痛く、食べ物は喉を通らない。チャイばかり飲む。Rs.60(約144円)。
<バス・スタンドへ向かう。途中GPOに寄る>
ムルタンに来るとき乗って来たTDCPのBus Standに行くつもりで、Hotel前からオートリキシャを拾い、GPO(郵便局)へ行くよう依頼する。
Bus Standの前に、昨晩書いた絵葉書を投函したかったのだ。
Hotelを出て左に行き、Custom Complexを右に曲がり、LMQ Rd.に出る。ここを直進して、デラーダDera Adda交差点に出る。ここがMultan新市街で一番の繁華街だ。ここを左に曲がるとHassan Parwana Rd.に入り、少し行った右側がGPOのはずだ。
GPOは道に面した大きな敷地の中にある。
オートリキシャが門を入ると、車がスピードを出し過ぎない様、道に横一線に土盛りされた減速帯があり其処をゆっくり過ぎると、疎らな木陰の中に大きなGPOの建物があった。オートリキシャ、Rs.20(約48円)。
オートリキシャを降りて、何をするともなく建物の外に佇む人たちの中を、陽射しが遮られて暗く涼しい館内に入いる。
カウンターで昨日書いた絵葉書2葉を見せて、「I’d like to send this postcard to Japan.」と言うと、stamp(切手)を買って来いと言う。
別の窓口で、「Air mail」「to Japan.」と書いた絵葉書を見せながら「for sending overseas」と言って、国際郵便用のStampを買う。
1枚Rs.15(約36円)、2枚でRs.30。
絵葉書にstampを貼り付けて先程のカウンターに出すと、無造作に脇の箱に投げ入れた。
あれっ?!インドでは、柄のついた判子で絵葉書にポン、ポンと消印をついていたけど、パキスタンではやり方が違うのか。
手際はインドと違うが、国際郵便用のStampはインドではRs.18(約63円)だったが、パキスタンでも同じくらいだし、インドから出した絵葉書は無事日本に着いたから、多分大丈夫だろう。
Lahore Fortの描かれた絵葉書だったので、早く出したかったのだ。
GPOを出ると、体がだるいので通りを行くオートリキシャを止めて、Railway Station に行ってくれという。すると首を横に振り、何か早口で言う。英語なのか現地の言葉なのか分らない。パンジャブ語もサライキ語も、どちらにしても私にはまったく分からない。
「By walk?」と言うと、そうだという仕草をして行ってしまった。
近いのだから歩いて行けということか。ここいら辺がインドやLahoreと違うところかもしれない。なにかすごく真っ当な商売をしている様な気がする。
でも私は、熱のためか体中に汗をかき、手に2Lのミネラルウォーターを持っていたので、短い距離でも乗りたかったが、仕方ない。歩き始めた。