<1日目ー2>
1997年3月12日 水曜日 釜山 晴れ
<金海空港で両替>
空港内の「朝興銀行チョフンウネンCHO HUNG BANK」のカウンターで、2万円のトラヴェベラーズ・チェック(T/C)を両替する。
T/Cの1万円のチェック2枚に名前をサインし、パスポートと一緒に窓口に出すと、目の前に数えながらウォン札が置かれた。
レシートを見て、改めて札を数えながら受け取る。2万円でW142,992だった。
韓国の通貨はウォン、通貨記号は「W」らしい。W1→約0.14円。逆に¥1→約W7.15だ。しかしこの中には、T/C両替の手数料なども入っているんだろう。多分現金での両替の方が割が良いんだろうな。しかし、現金では盗難に遭った時に対応が出来ない。
そこで今回の旅行では、小銭以外はT/Cでもってきている。

次いで、そうだ、忘れないうちにと到着フロアを歩き、JALカウンターを捜す。3月17日の、帰りのJAL952便のリコンファームをするためだ。
この後、今日を含めて6日間韓国内を歩く予定だが、地方都市にJALカウンターがあることはないだろうし、ましてや電話でのリコンファームに自信が無かった為だ。
だいたい、韓国内でどのように電話を掛けるのか分らないし、韓国内のJALオフィスの電話番号を捜す方法も分からない。仮に繋がったとしても韓国語で対応されても、流暢な英語で出られても全く自信がなかった。
だからこの空港でリコンファームが出来るなら、やってしまいたいと思っていたのだ。
JALのカウンターは空港ロビーに在った。
帰りの便のチケットとパスポートを見せながら、英語で「Excuse me, I’d like to reconfirm my flight.」と言うと、直ぐに受け付けてくれた。助かった!!
ターミナルビルの出口付近にあった空港の案内カウンターで、若い女性の職員に英語で、釜山市内へ行くローカルバスを尋ねる。
空港から釜山市内への移動手段は、ガイドブックによればタクシーか公共のバスしかない様だ。できるだけ節約した旅をしたかったので、端からタクシーは使いたくなかった。
若い女性職員は、私の姿を見て当然の様に、バスは「No.300」で、料金はW800(約112円)だと教えてくれた。
「Where is the bus stop?」乗り場は?と聞くと、外を指しながら「Over there.」とだけ言った。
<金海空港から釜山(プサン)市内へ>
ターミナルビルの出口の先に、タクシー乗り場が見える。その手前に細長いアイランドが有って、幾つかの掲示板が立っている。
「Over there.」か。ならばあのアイランドにバス乗り場の表示があるかなぁと行ってみたが、見つからない。
もしかしてと思い掲示板の反対側に回ると、そこに前後二つのバス乗り場の標識があり、前の方にだけ数人の人が固まっていた。
標識を良く見ると、「300」の字があった。ああ、ここだと思い、ズボンのポケットの中でW1000札を握ってそこの列に並んだ。
暫く待っていると、左の方から青白の車体で、前部の左端に「300」と書かれたバスが来た。他の文字はハングル表記で読めない。
前の人に続いて、車体の前から乗り込んでステップで立ち止まる。車内の造りは日本のワンマンバスと同じだが、日本と反対に車体の左側にある運転手席の右横に、料金を入れる箱が有る。
私が黙って手に持ったW1000札を見せると、運転手がそれを料金箱へ入れろと手で示しながら何か言う。しかし何と言ったか聞き取れなかった。
W1000札なので大丈夫かと疑問を感じながら入れると、箱の下の口からW100硬貨が二つ出てきた。
当たり前のことだが、妙に安堵した。
後ろの空いた席にザックを置き、座るまもなくバスは急発進した。
これは文字通りの「急発進」で、日本のバスのように、運転手が車内のバックミラーで、乗り込んだ客が座席に座るのを確認してからゆっくりと発進していくのに慣れていたので、仰天しながらもなんとか手摺に捕まって事なきを得た。
座席に座って、ガイドブックに付いていた地図を見ると、空港は釜山市の西側を流れる洛東江(ナクドンガン)の対岸、というより、広い川の中州の様な場所にあるようで、バスは一旦川に沿って北上すると、幅1Km以上あろうかという大河に架かる橋を渡った。
冬枯れの田と土地の造成で剥き出しになった地肌、そして無造作にゴミが捨てられドブのようになった小川や石造りの民家が続いた。
日本の冬でも木立の多い山肌や、木の家の続く風景を見慣れた目からは、初めてのひとり旅の心細さも影響してか、なにか寒々しい風景に映った。
長いトンネルを過ぎ、しばらくすると少しずつ家が立て込み初め、表のガラス戸一面に黒や赤でハングル文字が書かれた商店が現れ、あっという間に山の斜面一面に高層アパート群が延々と続く風景が現れた。
乗ったバスは間違っていないとは思うが、もう1時間近く走っている。
とりあえず国鉄の釜山駅か、あるいはどこか地下鉄の駅で降りたかったが、外を見てもどこがそうなのか分からない。
停留所の標識に目を凝らすが、アルファベットでの表示はなくハングル表記ばかりだ。
そのうち、いかにも市内という様な雑踏の中を走るようになり、時折通り沿いに地下鉄の表示が見え始めた。
停留所をいくつか過ぎた頃、ふと見えた地下鉄の標識に、漢字で書かれた「中央洞」の文字が見えた。
予定では、私はまず一番目につき易いだろう釜山駅の駅舎が見えたらそこで降り、地下鉄に乗り換えて中央洞(チュンアンドン)に出て宿を捜そうと考えていた。それが、その「中央洞」が突然現れたので、あわてて降車用の赤いブザーを押した。
