<3日目ー2>
1997年3月14日 金曜日 釜山 雨 、大邱 雨
<セマウル号で大邱へ>
地下鉄の中央洞から釜山駅(プサニョッ)まで行って、昨日は見学に行っただけの積りだった釜山駅の1階に向かう。
「超特急」のセマウル号で行こうと思ったのだ。これなら大邱迄1時間5分で行くと、ガイドブックに載っていた。
窓口で女性の駅員に「Can I have a ticket to Daegu?」と言って、切符を買う。W6,200(約868円)。
その時韓国語で何か言われたが、理解できなかった。
釜山駅1階のセマウル号専用の待合室で暫らく待って、セマウル号に乗り込む。


釜山駅を出発後、16:08に最初の駅に着く。見ると「東大邱駅(Dongdaegu)」と書いてある。
しかも、駅の表示板ではどうも次の停車駅は「大邱」ではない様で、此処が大邱市の最寄り駅らしい。日本の東海道新幹線で、「大阪」の最寄り駅が「新大阪」のようなものかなァ。
半信半疑のまま下車する。
私はてっきりセマウル号が「大邱」駅まで行くものだと思っていたので、面食らってしまった。
その時初めて、釜山駅の窓口で何やら言われたのを思い出し、あの時女性の職員は、セマウル号は東大邱駅までしか行かないから、大邱駅にはそこから乗り換えなきゃ行けないわよって言ったのかもしれない。
<ここは駅(ニョク)?>
「東大邱駅(トンテグDongdaegu)」で降りると、外は雨だ。ガイドブックを見ると、ここから「大邱」駅まではバスで行けるらしい。
駅前のバス停で、ガイドブックで調べた「No.3」か「No.26」のバスを待つ。
丁度来た緑白の車体の「No.26」に乗る。
バスの乗り方は、釜山の金海空港から乗ったバスと同じだ。W400(約56円)。
夕方の帰宅時間に入ったのか車内は混んでいて、車体真ん中付近の降車ドアの近くに吊革に摑まって立っていた。
この時ふと、東大邱駅から大邱駅までの普通電車はなかったんだろうかと思った。
あの時は「セマウル号は大邱駅に行かない」ということで気が動転していたので、大邱駅には、鉄道では行けないんだとばかり思い込んでいた。各駅停車の電車のことは全く頭に浮かばなかった。
外は冷たい雨だったが、逆に車内は人いきれで蒸し風呂の様に暑い。背中にサブザックを背負って、雨に当った厚手のコートが濡れて体にまとわりつくので、暑くて堪らない。
バスの急加速や急停車の度、身体が大きく揺れる。雨と車内の熱気で窓が曇り、何処を走っているのか分からない。もっとも、初めての土地で、外が見えてもそれが何処なのか分からなかっただろうが。
駅前から出たバスは、大きな病院のような建物がある十字路を左折して、しばらく西に向かって走っている。東大邱駅の次なので、大邱は西の方なのだろう。
しばらく走ったあと川を渡って町中に入ると、周囲の街並みが急に賑やかになって来た。
道路の両側に、低い家並に沢山の店と露天商がびっしりと並んで、雨の中バスのすぐ脇を多くの人やリヤカーが行き交っている。
ふと隣に立っていた韓国人の男性が、「ここは駅か?」と韓国語で聞いて来た。
殆ど聞き取れなかったが、「ニョク(駅)」だけ分かったのと、自分もここが大邱駅ではないかと疑心暗鬼だったので、男性の言葉に促されるように「ネー(そう)」と頷くと、彼も私も他の人たちと一緒に降りてしまった。
ここだと思ったので降りるには降りたが、方向も見当もまるで分からない。周囲を見渡して見ても、どこにも駅舎らしきものが無い。
周りには雨に打たれた天幕の下に、野菜や魚など沢山の露店が店を出しているばかりだ。
はじめ駅前の繁華街かと思った。しかし、道の先を眺め透かしても駅舎らしいものがどこにも見えないのだ。
やっぱり違う。
どう見てもそこはただの市場(シジャン)の様だ。大邱駅に近いのなら、有名な七星市場(チルソンシジャンchilseong Market)かもしれない。
気付いてから、間違えて教えてしまったさっきの男性に会わなければ良いがと、次に来た「No.26」のバスに慌てて飛び乗ってしまった。W400(約56円)。
バスに揺られながら、あの男性に対し申し訳ない思いと、一方、大体この時期他に誰も着ていない様な厚いコートを着て、ザックを背負っている姿を見て、どうして韓国人と間違えるのだろう。少なくとも土地の人ではないことくらい分からなかったのかと、八つ当たりながら憤懣遣る方なかった。