歳をとっても旅が好き

海外ひとり旅の記録?いや記憶かな

韓国ひとり旅(1997年) <16> 3日目ー1 これからどうしよう?

<3日目ー1

1997年3月14日 金曜日 釜山 雨 

 

<沿岸フェリー「エンゼル号」は>

暗い中、5:00頃目が覚め、まどろんでいる裡に沢山のひとの夢を見た。ひと時にこんなにたくさんの夢を見たのは初めてだ。しかしオンドルパンの床の暖かさに、また寝込んでしまった。

7:30、ソウル荘をチェックアウトする。
中二階で会ったご主人に、麗水(ヨス)に行くと言うと、麗水ならバスが良いよと教えてくれる。
私はフェリーで行くことを決めていたが、そのことは触れず、「カムサハムニダ」とお礼を言って出てきた。


ザックを背負って、傘を差しながら、中央路から沿岸フェリーターミナル(Coastal Ferry terminal)まで歩く。一面に濡れた街路と周囲の建物を眺めながら行くと、小雨の中多くの通勤の人が先を急いで歩いている。
私も急ぎ足で20分近く歩いて、桟橋にある沿岸フェリーターミナルに着いた。
巨大な建物は工事中で、周囲には足場が組んである。養生ネットをくぐる様に中に入った。

2階の206号窓口で、「エンゼル号」のチケットの申し込みをしようとしたが、生憎予定していた9:10発が無く、14:00発しかないと。1日2便の様だ。
考えたが、バスで行く気にはなれず、14:00発のチケットを購入する。麗水へは、行くことだけが目的ではないからだ。
W26,700(約3,740円)。

工事中の釜山のフェリーターミナル

フェリーチケットの前売り申込み用紙

 

思いがけず空き時間になった午前中を動くのに荷物が邪魔なので、もう一度ソウル荘に戻り、事情を話してザックを預かって貰う。

朝食が未だだったので、いつものマクドナルドに入ってチーズバーガーを食べる。W2,700(約380円)。
ガイドブックを広げながら、これから何処へ行こうか考えるが、時間はフェリーの出る14:00までだ。
そうだ、宿の主人が教えてくれた梵魚寺(ポモサPOMOSA)へ行ってみようと思い立った。

 

<梵魚寺(ポモサ)へ>

梵魚寺は、ガイドブックによれば、釜山北部、ハイキングコースとしても有名らしい金井山(クムジョンサン)の中腹にある、新羅時代の678年に建立された曹渓宗の古刹とのこと。

日本では645年が大化の改新だから、678年と言えば壬申の乱後の天武天皇時代。朝鮮半島で、日本と百済の連合軍が、唐と新羅の連合軍と戦って敗れた「白村江の戦い」は663年だ。
唐と新羅が攻めてくると、九州に水城や大野城などの防御施設を作っていたころで、梵魚寺の建立もそのころかな。

宗派は曹渓宗という禅宗で、韓国仏教界の最大勢力らしい。
しかし李氏朝鮮時代(1392年~1897年)は儒教が国教だったので、何度も仏教弾圧が行われてきたし、1945年日本統治が終わってからは、仏教が日本支配に協力したとして抑圧された結果、韓国ではいまはキリスト教徒の数が一番多いと聞いたことがある。

梵魚寺は、韓国を代表する25寺院のひとつで、「一柱門」や「天王門」「大雄殿」などの重要文化財の建物が並んでいるらしい。しかし、これも1592年の文禄の役(壬辰倭乱)の時に焼失して、1613年に再建されているらしい。
昔、慶州にある仏教寺院を訪ねてみたいと思ったこともあるので、梵魚寺に行ってみるのも良いかな。

肝心の交通の便は、ガイドブックには地下鉄の駅を降りて、バスに乗って10分くらいで着くと書いてある。いろいろな意味で、今日の午前中を有効に使えそうだ。

釜山地下鉄1号線路線図 ポモサ駅は終点から1つ手前だ

 

中央洞駅から地下鉄1号線に乗り、終点からひとつ手前の梵魚寺(ポモサ)駅で降りる。W450(約63円)。
駅を出て、道路沿いに来たバスに乗る。W700(約98円)。
これで、約10分くらいで梵魚寺に着くはずだ。

しかし作物の何もない荒涼とした畑の中を、バスはいくら進んで梵魚寺(ポモサPOMOSA)が現れない。
10:00過ぎても着かない。ガイドブックには何番のバスとは書いていなかった気がする。地下鉄の駅が「梵魚寺」なので、どのバスでも梵魚寺に行くもんだと思い込んでいた。しかしどうやら違うバスに乗ってしまった様だ。

このままではフェリーの時間までに戻れない!と思って、梵魚寺へ行くことは諦めて、殆ど何もない田舎の真ん中でバスを降りてしまった。
周囲は畑の様だが一面土色で、見渡す限り、道を尋ねられるような店らしいものは何もない。小雨が降っているなか、さらに雨を激しくさせるような灰色の雲が、空をのむ勢いで遠くから流れてくる。

 

降りたはいいが、帰りはどうするんだ。
当初の興奮が少しさめて、ようやく前後のことを少しづつ考えられるようになった。
そうだ、反対方面、つまり駅に向かうバスの停留所は、道の反対側にあるはずだ。そう思ってみると、少し離れた道の向こうに停留所の標識が見え、人影も見える。

地下鉄「梵魚寺駅」行きと思われるバス停へ行って、一人だけ居た年配の女性に、道の先を指さして「チハチョル・ポモサ?」と聞くが、発音が悪いのか不審そうな目を向けられただけで返事は無かった。

バスは来ない。だんだん雨が酷くなってきた。これは困ったぞ!と思っていると、偶然タクシーが通りかかったので、慌てて手を上げて停めた。
「チハチョル・ポモサ(地下鉄POMOSA)」に、「ニョク(駅)」と言うと何とか通じて、W12,000(約1,680円)だと。
「ピッサヨ(高い!)」と言ってみるが、運転手もまけない。日本人がひとりで田舎のバス停、しかも雨の中だ。しっかりと足元を見られている。

仕方なく乗り込むと、走る途中の道で手を挙げている男性を乗せて、相乗りしてやっと地下鉄「梵魚寺(ポモサ)」駅に着いた。
相乗りになったからか、運転手はW10,000(約1,400円)で良いと言って来た。


<これからどうしよう>

梵魚寺(ポモサ)駅から、また地下鉄に乗り中央洞駅に戻った。W450(約63円)。
再びソウル荘に行き、荷物を受け取り、お礼を言ってフェリーターミナルに急ぐ。

慌ただしくターミナルに入ると、出航時間が迫っているはずなのに、何故か広い空間に人影がなく閑散としている。
何があったのだろうと、胸騒ぎがする。
フェリーの発車標を見ると、今日の便は荒天のため欠航「Cancelled」と表示されていた。
「えっ?!」思わず天を仰いでしまう。どうしよう。

考えても、悪態ついても、出航しないものは仕方ない。206号の窓口で乗船切符の払い戻しを受け取る。
梵魚寺も行けず、雨の中見知らぬ停留所で待ち続け、タクシーには思わぬ出費を強いられながらも慌てて帰ってきたのにと、この半日の徒労感が半端でなく重い。

 

これからどうするか、また朝来たマクドナルドでコーヒーを飲みながら考えた。
13:30 PMを過ぎており、これからバスターミナルまで行ってバスに乗っても、麗水(ヨス)まで3時間30分以上掛かる。着くのは暗くなりそうだ。夜になっては慣れぬ土地で宿を探すのも大変だ。

地図を見ながら、それなら此処釜山からソウルへ行くルート上にある大邱(テグdaegu)はどうだろう。日本では余りなじみのない地名だが、韓国第三の都市だ。そこなら鉄道でも行けそうだ。

しかも私には、昔読んだ本で、少しなじみがあるのだ。